カテゴリ : 小説・文芸 ジャンル : SF・ファンタジー / SF(海外) 出版社 : 東京創元社 掲載誌・レーベル : 創元SF文庫 ページ数 : 275ページ 電子版発売日 : 2016年07月22日 コンテンツ形式 : EPUB サイズ(目安) : 2MB 【映画化原作】ロンドン中心部に聳え立つ、知的専門職の人々が暮らす、新築の40階建の巨大住宅。1000戸2000人を擁し、マーケット、プール、ジム、レストランから、銀行、小学校までを備えたこの一個の世界は事実上、10階までの下層部、35階までの中層部、その上の最上部に階層化されていた。その全室が入居済みとなり、ある夜起こった停電をきっかけに、建物全体を不穏な空気が支配しはじめた。3カ月にわたる異常状況を、中層部の医師、下層部のテレビ・プロデューサー、最上層の40階に住むこのマンションの設計者が交互に語る。バラード中期の傑作。/解説=渡邊利道
借りたもの。 祝・映画化記念の再販! 映画鑑賞後に読んだことで、映画との明確な違いを意識する。 映画では”ヴァニタス”――タワーマンションと階級社会に見る人間の傲慢とその儚さ――虚栄を強く意識させられたが、小説ではタワーマンションという空間での環境問題――近隣住民の心身に与える影響やテクノロジーは人間を幸せにせず暇を持て余した人間が刺激を求めて暴力的になってゆく様を強くしている。 世界の縮図、閉じた円環の中で機能する完璧な世界を構想しながら、ただ高みへと目指す一方的な構造は次第に住んでいる人間を不安定にさせる。 公共施設の不備や故障、次第に外界から孤立し、物資も滞ってゆく…… 階級意識と不満、近隣の人間との距離の近さも災いして、自身の権利ばかりを強く打ち出す住民たちは次第に文化的・文明的な生き方を放棄する。 停電などの電気設備の故障は、需要と供給のバランスがとれなかった当時を反映しているのかもしれない。 それが脳神経の伝達とリンクし、タワーマンションが人間の身体に見立てられたり、階級社会制度そのままだったり、様々な変容をする。 どの様な解釈をされながらも、それらは閉塞し停滞し、崩壊してゆく。 それがまるで正しい事のように、3人の男たちの視点から描かれている、狂気に魅せられる。
本の読み方 スロー・リーディングの実践(PHP文庫) - 平野啓一郎 - 小説・無料試し読みなら、電子書籍・コミックストア ブックライブ